T 身近に親しまれている仏さま
仏さまについて
私たちが通常仏さまと呼ぶところの仏像は、仏典の経軌(経典と儀軌)にもとづいている。
仏教信者にとってそれは、信仰の対象であり心のよりどころでもある。過去、現在、未来の三世に、それぞれ千の仏があると考えるから三世三千仏ともいう。ところでこの仏さまの中にも、人気のある仏さまとほとんど知られていない仏さまとがある。東南アジア諸国の寺院を参拝したときのことであるが、 一方の仏さまには線香が供えられ、供物があげられているのに、おとなりの仏さまには何もないというところがあった。寺僧にたずねたところ、やはり仏さまにも人気、不人気があるのでしょうということであった。
これからはこの仏さまについてのベるわけであるが、その範囲がまことに広いところから、人気、不人気というより、より親しまれている仏さまを中心に解説を加えてみたい。
仏像は人間が心に描く理想を表現しているところから、その時代の最高の技術と感覚でつくられ、美術的な価値も高い。そして作家の心がこめられているところから、おのずと礼拝するものの心をうつのである。