湯灌


 死亡が確認されると、まず死者の目を指で伏せ、合掌させる。次にぬるま湯で遺体を洗い清めるわけであるが、これを湯灌とよぶ.昔は大きな湯灌だらいにまず水を入れ、その上に湯を注いだものである。日常生活でこのような湯のぬるめ方をすると、不吉といって嫌われるのもそのせいである。湯灌するのは死者が死出の旅に出るので、清めるという意味がある。むかしは死者を丸裸にして、親、兄弟が立ち合つて遺体を湯灌の中で洗つたものであるが、今ではこのぬるま湯でタオルか布をしぼりそれで体の各部をふいて湯灌したこととしている。アルコールで遺体をぬぐい、鼻、耳、肛門などから汚れものが出ないように綿の栓をつめ、目とロを閉じさせるのも近年の方法である。
 病院で死亡の時は、看護婦さんがやつてくれる場合がある。自宅で死亡した場合も医師の指示に従えばいい。湯灌がすめば男性の場合ひげをそつてあげ、女性の場合は薄い死化粧をする。病死などでやつれている時は含み綿をしてやって、ふっくらした顔にしてやる。 人間生まれた時に産湯を使い、死亡時に湯灌をするということはひとつの運命といえよう。