末期の水


 死が決定的となり、医師が臨終を告弁りた時、家族が真っ先にすることほ末期の水を含ませることである。「死に水を取る」ともいうが、これは故人と血のつながりの濃い人から順に行われることになっている。 一家の主人が死亡した場合は、その妻、長子、次子、親近者という順番である。
 末期の水は新しい筆か割箸の先に脱脂綿を白糸で縛り、これに水を含ませて軽く唇を潤すことになっている。死に水は死者に対する.餞であり、ひとつの仏教の儀式である。通常、人間の死は心臓の鼓動が停止したと医師が認あた時なされるが、心臓の停止のみで他の機能が完全に止まっていないため、死の確認のため二十四時間おくことになっている。土葬すペく納棺したところ、その直前になつて死者が蘇えったとか、伝説めいた話も伝えられている。医学の発達した現在では、死の判定にそう間違いがあるわけではたいが、不可思議な人間 の肉体ゆえ、奇蹟に近いこともまったくないとはいえない。