行道


 座禅というものは座ることではあるが、その座る道場に到るまでの過程というものも軽々に取り扱うべきでない。
 とくに多人数の場合、勝手気ままに道場に入り、それぞれに座っているようでは、すでにその導入の部分から乱れているということになる.
 堂内に入る前に想念を凝らし、心の準備をするために、入るまでの過程、すなわち行道というものが必要である。胸のところに手を組み、背中を伸ばし、大勢の場合は一列か二列に整列し、そして静かに足を運ぶ。教導師にいわれるに従って入堂することである。
 整列が終わって歩き出すとき、まず右足からとされている。この点だけは多くの座禅法から見ても一致している点である。その理由にはいろいろあるが、簡単にいえば利き足から進む方が足の抵抗がないということではなかろうか.
 前へ進むということは前を探るということであり、足の探る第一歩が利き足でない左足であったとすると、いささかの不安が伴うものである。その証拠に目をつむって歩いていくと、まさかというときには、手でも足でも右を出すものである。だから行道初めのときは、右足を第一歩とし、なおもし階段があったりすると、右足を先に降ろすのではなく左足を降ろすことを心掛けるべきである.
 いま述べたように、左足を一歩降ろし次に利き足で確かめるということは心の安堵につながるのである。